DIARYダイアリー
奇想天外 〜キリマンジャロ登山を終えて〜
2019年8月 6日
7月30日 午前6時25分。キリマンジャロウフルピーク(5545M)に登頂。私なら今回の登山に「奇想天外」と名前をつける。
午前中に登頂する為には夜中に出発する必要がある。
アタック前日、16時に就寝して23時に起床。寝る時間が長いほど体の疲れも取れアタックに体力を残せる。でも、そう簡単にはいかないんだよな〜。
外は明るくて、賑やかな声も聞こえてきてなかなか寝付くことが出来なかった。
気づけば17時、18時、19時、刻々と寝れない中時間だけが過ぎていく。結局、睡眠時間たったの2時間...。
寝不足のなかアタックするのはかなり不安。アタック直前のご飯は、お茶漬け!そして出発直前には虎屋のようかん!
日本人には、お米がすーと入るからお茶漬けは山の必衰アイテム。お米はやっぱり優しい味。眠たいけれど、心も体も温まったところで登山スタート!
風は時たま強いけれど連日いい天気が続いていて、雲一つなく澄んだ星空を、見ながらの登山。なんと言っても天の川がすごく綺麗。流れ星もみて、最高なコンディションで始まった頂上へのアタック。
しかし、それもつかの間、いつの間にか雲の中。いつか雲は抜ける、メルー山の時も何度も雲の中に入ったけど六時くらいになると雲はなくなったからきっと今回も抜けるだろう。
抜ける、抜ける、抜ける?
気温がどんどん低くなってきて、上の方ではゴゴゴゴゴォォという不吉な音。
気づいた時にはかなり濃い雲の中だった。
あまりの寒さでダウンジャケット3枚、ダウンパンツをはく。髪の毛もまつ毛も段々と凍ってくる。
頂上付近のステラポイントで岩陰でしゃがみこんで休み、風が少し止むのを待つけれど、どんどんと酷くなっていく。
寒さと眠気で意識が落ちてきてる私の耳に父とガイドさんが、諦めるか、このまま行くかを話してる声が聞こえた。
登るのか、降りるのか、それは山の上ではとても難しい判断。
私が始めて雪山登山をしたのは八ヶ岳。あの時も吹雪だった。「していい無理」と「しては行けない無理」があると父に教わった。そこの分かれ目を判断するのが難しいとも話していた。
登りたいという欲も加わってくる。山では判断一つで命の分かれ目ともなる。
父がよく私に言い聞かせている事はこういう事だったんだと、今、キリマンジャロでリアルにその事を感じていた。
continue、それが耳に入ってきた。登ると決断した瞬間だ。
太陽も上がってきたようで明るくなるも数メートル先は何も見えない。
どこを見渡しても白で崖があるのかそれとも平の地面があるのか。少し力を抜けば、飛ばされそうな風に抵抗しながら重心を低く前へ前へ。
見えた、あれだ!凍える手をポケットに入れ温めながら、飛んでくるあられを避けて下げていた頭をあげる。
私が写真で見てきたあのポールが真っ白に凍った状態で目の前に現れた、頂上だ、頂上、頂上、頂上。
ついた、ついに頂上についた。
自分が登りたかったキリマンジャロの頂上。実感が湧くようで湧かないこの気持ち。自然と涙が出た。
父に抱きついて、嬉しさを分かちあった。キリマンジャロなんだ。今、私は頂上に立ってる!嬉しい!自分はとても幸せ!
アフリカ大陸最高峰というよりも、長年、自分が登りたかったキリマンジャロに登ったという気持ちが嬉しかった。
あまりの寒さと風でカメラを出すことは困難。残念ながら自分のカメラで撮ることは出来ず...。
史上最短頂上滞在時間、5分未満で撤退。
居すぎると危ないと父が言ってた。下山途中、下から上がってきた人たちとすれ違ったけれどみんなとても辛そうな、苦しそうな顔をしていた。
私達は、悪天候も想定内し予備のダウンジャケットなどたくさん用意していたけれど、薄着のまま登ってきた登山者が多かったのにはビックリした。予備の服を持ってきて良かった。
キリマンジャロは、もはや冬のヒマラヤみたいに寒かった。改めて山は怖いと思った。でも、山はこうして定期的にピンチを与えてくれるから、学びも多い。
下山中、最終キャンプがちらほらと霧の間から見えるようになった。真っ白の霧の向こうには、こんな景色があったのか。
今日も風当たりは気持ちが良い。振り向けばキリマンジャロがある。そう、メルー山の時のように、、、とはいかない。
そんな簡単に抜けるような雲ではなく、深く大きい雲が山頂を隠していた。
キリマンジャロの頂上付近を囲んでいる。頂上が大きいからこそ、とてつもなく巨大な雲で、縦にも長い。こんな雲の中を通ってきたと思えば疲れも吹き飛ぶくらい、笑えてきちゃう。自分はこの中を登ったのだと。
人によって「景色が見れなかったのが悔しい」とか「登頂した感動よりも疲れた」という気持ちの方が強いのかもしれない。
そりゃ、この雲なんだから。私も疲れた。
強風に吹かれて寒さで凍って。でも、何度も山に登ってて教えられたのは山は同じ風景を見せないという事。沢山の顔と姿を持っている。これも、キリマンジャロの顔。
私は、素直に今とっても登れたことが嬉しい。吹雪でも景色が見れなくても、キリマンジャロに変わりはないし、登りたかった山に登れたことが本当に嬉しい。目標を一つクリア!
次来た時は朝日を見たいな~。
なんて思いながらキリマンジャロを眺めている。